ゼロサイクルは、山手國弘氏が提唱したREワークの中でも最も重要な実践ポイントであると思います。
生成手法の順序が、See→Plan→Doであることは前回説明しました。今回はこれを詳しく見て行きましょう。
詳しくみると、「採取:See」→「解析:Pickup」→「構成:Setup」→「確認:Do」の繰り返しになります。
位相図を見ながら解説して行きましょう。
1.採取(See:リアリティハンティング)
ゼロサイクルの第一段階は、採取です。これは事実を集めるためのもので、最も難しいことでもあります。
マーケティングでは、例えばグループインタヴューという手法を使いますが、消費者の本音を聞くことがなかなか難しいことは知られています。
消費者自身が自分が何を求めているのか、自分のニーズがなんであるかを説明することができにくいからです。
提示された商品・情報・サービスが良いか悪いか、気に入ったかいらないかは答えることができますが、なぜそうなのかを説明しようとする難しいのです。
これは、消費者ニーズがブラックボックスになっているせいです。深いところにある本音のニーズを探り出すことは容易なことではありません。
したがって、ゼロサイクルの最初の段階はまず「よく聴き、よく観る」ことから始まります。
このためのポイントは、前提を持たないことです。前提には色々なものがあります。
まず大切なことは「落とし所を持たないで聴く」ことです。
私たちが話をする時は、ほとんど自分が出したい結論を持っています。そうすると、会話は交渉だったり説得だったりという議論になってしまいます。
会話が議論になるときは、私たちの中の信念や価値観が動いている時です。そうすると相手の価値観と違う時には衝突したり、批判したりするわけです。
これでは、相手のリアリティを見ることが難しくなります。
次の前提は「ランク」です。ランクというのは、年齢、性別、社会的地位、人種、宗教、仕事の種類、学歴、収入など様々なものがあります。
例えば、西欧では白人男性で弁護士でキリスト教徒で高収入となると、ほぼトップのランクに属することになります。
日本でも男性社会なので、男性で与党の議員政治家で大臣にもなれば立派なトップランクとみなされるでしょう。
私たちは、無意識にランクを投影して相手を見ています。上のランクの人は、自分より下のランクの人の気持ちは分かりにくいです。
相手が女性だというだけで偏見を持つ年配の男性も多くいます。「おんな子供」という言い方は、相手は物がわからない存在だと言っているのです。
自分のランクを相手に投影しないで話を聴くのは、非常に難しいことです。しかし、これがないとゼロで聴くことはなかなか難しいことに気づくでしょう。
まずは、自分のランクが何かを気づくことから始めましょう。そしてそれが社会生活の中でどのように働くのかを見ていきます。
学校生活や家庭生活での体験、会社や日常生活での体験も深い気づきを与えてくれると思います。
気づいてきたら、それをいったん棚上げして聞いて見る練習も良いと思います。
こうして話す時には、「なるほどそうなんですね。」という相づちが効果的です。否定も肯定もせず、事実だけを受け取って行く姿勢の表現です。
相手の方の話を事実のまま受け取れない時には、自分の内面が反応しています。そのときは、自分の内側を見つめながら話を進めます。
自分の価値観が反発していないか?自分の信念が同意していないか?何か肚の中の感情が違和感を感じていないかなど…
その違和感が消えるまでそのままでいながら会話を進めます。
この繰り返しで、次第に相手のブラックボックスが開かれてリアリティが出てくるようになります。
この時、瞑想をしている人は空間に意識を出しながらゼロサイクルをかけるとより共鳴が良くなると思います。
2.解析(Plan:ピックアップ)
前段のハンティングにより、さまざまなリアリティが出てきます。次は集まった情報の解析段階に入ります。
この時のポイントは、事実のみをピックアップする姿勢です。相手の話には事実と意見が混ざり合っています。
事実に相手の価値観による比較・判断・評価が意見として乗っかっている場合が多いのです。
例えば、他の人との比較した意見だったり、良い悪いの判断の結果を話しているだけだったり、あるいは自分の基準で評価した結果を話しているだけだったりするのです。
刑事さんが現場百遍と言うのは、自分の思い込みや偏った見方で見逃していることを前提にして何度も事実だけを確認しようという態度だと思います。
そのくらいに相手の話の中から事実だけを抽出することは難しいと思います。でも、練習を重ねることによって段々と上手になることも事実です。
このようにして、事実だけを書き出すとその事実が一つの体系を作り出していることに気づくようになります。
REワークで「位相化」と呼んでいるプロセスに入ります。簡単な位相から複雑なものまでさまざまなものがありますが、事実を概念化したような空間が現れて来るのです。
この段階に来たら次のステップに進みます。
3.構成(Setup:セットアップ)
前の段階のピックアップがうまく行って、位相らしきものが出来てくると、ゼロサイクルの後半は楽なものになります。
ゼロサイクルの現場で、その場面に答えが出てくるのを実感します。「ああっ、それだよね!」という感じで、誰もが納得する答えが出てきます。
したがって、この構成というステップは「構成する」ではなく、答えが「訪れてくる」という感覚です。
前段でピックアップしたものが事実だけなので、それが繋がった時、最も適切な答えが訪れるのは自然なことと感じられます。
しかも、関係者の全員が納得できるというのは、だれの意見も入っていないからだと考えられます。人は、意見については自分の価値観と違うところに反発しますが、事実には反発のしようがないからではないでしょうか。
4.確認(Do:アクション)
前段で訪れた内容を実施する段階です。ここでの注意点は以下の通りです。
①前段で出た答えに沿った行動を心がけるようにして、結果を期待したり導いたりしない。
②失敗とか成功とか考えずに、淡々と対応して行動する。
③途中経過はこまめにフィードバックすること。それにより新しい採取が必要になるかもしれない。
ゼロサイクルは、「ゼロ:オリエンテーション」の部分と「サイクル:ファシリテーション」の二つが融合してでき上がっていくプロセスだと思います。
このような意識の使い方を身に付けるためには、心のデトックスと瞑想が有効だと思います。